30年ぶりにバイクへ戻った日。
感じたのは速さではなく、思っていた以上の“優しさ”でした。
CT125に初めて乗った日の体験を、
大人のリターンライダーの目線で綴ります。
バイクの納車日
仕事を終えた夕方、いつもより少し早足でショップへ向かいました。
空はまだ明るく、昼の暑さが残る夏の空気がゆっくりと街に漂っています。
特別な日なのに、信号も人の流れも、いつも通り。
だけど自分の中だけが、どこか落ち着きませんでした。
30年ぶりに、自分のバイクを迎える日です。
CT125と初対面

お店の前に着くと、入口の横に一台のCT125が静かに置かれていました。
パールベージュの車体は派手さはないのに、不思議と目を引きます。
夕方の光を受けて、少しだけ柔らかく輝いていました。
「ああ、この子なんだ」
そう思った瞬間、胸の奥がじんわり温かくなりました。
若い頃のような興奮ではなく、
長く離れていたものと再会したような感覚でした。
店主からレクチャー
店主から操作方法や注意点の説明を受けます。
久しぶりのバイクなので、ひとつひとつ慎重に聞きました。
カブ特有の自動遠心クラッチ。
前を踏めばギアが上がり、後ろを踏めば下がる。
クラッチレバーがないことにも最初は戸惑います。
けれど店主は笑って言いました。
「焦らなくて大丈夫ですよ。体が思い出します」
その言葉に、少し肩の力が抜けました。
乗り方教室
そして「少し乗ってみましょうか」と言って、
真夏の暑さの中、1時間以上も練習に付き合ってくれました。
発進、停止、曲がり方。
ゆっくりと、一つずつ。
汗をかきながらも見守ってくれる姿に、
ここでバイクを買ってよかったと思いました。
福岡のバイク屋さんは、なんだか人も優しい。
そんな印象が、この日の最初の思い出になりました。
久しぶりのエンジン始動で感じたこと
思っていたより静かな鼓動だった

キーを回してセルを押すと、
小さく穏やかな鼓動が返ってきました。
もっと力強い音を想像していたのですが、
このバイクのエンジン音は控えめで、落ち着いていました。
主張しすぎないのに、確かに存在している。
その静かなリズムが、今の自分の心拍と重なるようでした。
アクセルを少し開けても、急に前へ飛び出すことはありません。
ゆっくり、丁寧に動き出します。
まるで「急がなくていいよ」と言われているようでした。
30年ぶりに戻る身には、この優しさがとてもありがたく感じられました。
スロットルを開けた瞬間の安心感
発進してみると、
バイクはとても素直に応えてくれました。
こちらの操作を急かすこともなく、
ただ静かに前へ進む。
昔乗っていたバイクは、
どこか頑張って乗る乗り物でした。
でもこのバイクは違います。
「よし行こう」と気合いを入れなくても、
自然に動き出せる。
怖さよりも安心が先に来る感覚。
それが何より印象的でした。
走り出して分かった優しさ

足つき・ポジションの安心感
走り出してすぐに感じたのは安定感でした。
停車しても不安がない。
ぐらつかない。
シート幅が広いので少し心配していましたが、
厚底ブーツのおかげで問題ありませんでした。
それよりも、座った瞬間の落ち着きが印象に残っています。
バイクに「乗る」というより、
自然にそこに「いる」感覚でした。
それだけで気持ちが少し穏やかになります。
姿勢が自然で身体に力が入らない
ハンドル位置が高く、前傾姿勢になりません。
肩も上がらず、腕も突っ張らない。
背中が自然に伸び、視線も遠くまで届きます。
街並み、空、遠くの山。
すべてがよく見えます。
速く走らなくてもいい。
ただ流れに乗るだけで気持ちいい。
身体に余計な力が入らないだけで、
こんなにも安心できるものなのかと驚きました。
景色を見る余裕があった
少し走ったところで気づきました。
風の匂いを感じていること。
夕方の光をきれいだと思っていること。
信号待ちで空を見上げていること。
昔は、スピードばかり気にしていました。
今は、景色を見ている。
その変化が、
時間を重ねてきた自分自身を静かに教えてくれました。
速さではなく安心感のバイクだった
学生時代のバイクとの違い
学生の頃のバイクは、
遠くへ行くための乗り物でした。
距離、スピード、達成感。
それが楽しさでした。
でも今は違います。
ゆっくり流れる時間そのものが楽しい。
信号待ちの時間も嫌ではありません。
走ること自体が、
静かな体験になります。
バイクが変わったのか、
自分が変わったのか。
たぶん、両方なのでしょう。
「どこかへ行かなきゃ」じゃなくていい
目的地がなくてもいい。
少し走るだけでも満足できる。
このバイクは、
日常の中にすっと入り込みます。
特別なイベントではなく、
生活の延長としての楽しさ。
それが、今の自分にはとても心地よく感じられました。
初めて乗った日、心に残ったこと

優しい乗り味は大人にちょうどいい
無理をしなくていい。
頑張らなくていい。
ただ乗ればいい。
その気楽さが、今の自分にはぴったりでした。
若い頃は、
遠くへ行くことや速く走ることが価値でした。
でも今は、
穏やかに走れることの方が嬉しい。
疲れにくく、焦らなくていい。
この先も長く付き合えそうな安心感があります。
このバイクなら日常が少し変わる気がした
遠回りしたくなる。
空を見上げたくなる。
少し寄り道したくなる。
そんな小さな変化が、
これからの暮らしを少しずつ変えていく気がしました。
家に帰るまでの短い道のりが、
まるで旅の始まりのように感じられました。
まとめ:CT125は思っていたより優しかった
30年ぶりの復帰バイクとして、
この選択は間違っていなかったと思います。
速さより安心感。
効率より余白。
このバイクは、
急がなくていいと教えてくれる存在でした。
エンジンを切ったあと、
しばらくその場から動けませんでした。
また明日も乗りたい。
ただそれだけを思っていました。
その気持ちが戻ってきたことが、
何より嬉しかったのです。
こうして、私のCT125との時間が始まりました。
特別な旅じゃなくていい。
少し遠回りしたくなる日常を、
これから一つずつ記録していこうと思います。
